ラジオ・ロマンティック《音楽日々帖》


 いまこの瞬間も、別世界とつながった電波が宙を飛び交っている。心の周波数さえあえば時空の扉が開くのだ! 授業中にそんな妄想を膨らませていたラジオっ子がそのまま成長し、このコラムをいま書いているわけですが、異次元のラジオ局にチューンインしたかのようなOPNの『Magic neohtrix Point Never』を聴いて、ラジオがまとうロマンや、現実逃避的な感覚が蘇り、ささやかな興奮を覚えました。

 言葉にならない部分から漏れ伝わるものこそがラジオの醍醐味であるならば、エイドリアン・レンカーの『songs and instrumentals』は、とてもラジオっぽい“耳をすませば”なアルバムです。周囲の自然音に、かすかなホワイトノイズ。「zombie girl」では、息づかいが聞こえるほど近い歌声に、ハエの不快な羽音。静かな弾き語りの後ろにはたくさんの音が鳴っていて、山小屋の空間や匂い、窓の外の景色へと想像を掻き立てられ、まるでトーク番組に聞き入るように神経が研ぎ澄まされました。

 さて、最近インスタライブを見ているとラジオに似ていると感じる瞬間があります。昨年5月に宇多田ヒカルがインスタライブをしたのですが、画面の向こうにはラジオで見せる以上に素の彼女がいました。ワンオクロックのTakaを迎えた回では、歌手を親に持つ者同士による深い話も。コロナ以降、実際のラジオも宅録やリモート出演が増えて、スタジオ収録とは違った空気感にハッとさせられることがあります。あらためてラジオの魅力について考えさせられる今日この頃です。

 

ONEOHTRIX POINT NEVER『Magic Oneohtrix Point Never』

 プロジェクト名はラジオの周波数が由来。テープを巻き戻す音から、番組のジングル、雑音まみれのトーク、どこか懐かしいポップソングまで、架空のラジオ局をテーマにしたアルバム

metro215_music_01.jpgBEAT RECORDS / WARP 2020

 

Adrianne Lenker『songs and instrumentals』

 ビッグ・シーフのボーカリスト。ツアー中止によりコロナ禍にマサチューセッツの山小屋で全編アナログ録音した弾き語りアルバム。美しいフィンガーピッキングにも耳をつかまれる

metro215_music_02.jpg4AD 2020

 

宇多田ヒカル『Time』

 CDデビューよりラジオデビューが先で、キャリアの節目には率直な言葉でファンに語りかけてきた。本作のプロモーションではインスタライブを実施。PVも自宅で撮影している

metro215_music_03.jpgSony Music 2020 配信限定


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