こんなにも冬が過ぎるのを待ち遠しく思ったことはないかもしれません。新しい季節にささやかな希望を抱きつつ、気持ちも春めく音楽をご紹介します。
『Home』からの先行シングル「ComeInCloser」が届いたとき、これはライの夜明けかもしれないと思いました。個人の愛にも、あらゆる隔たりにも、雪解けと始まりを予感させる歌詞。それを後押しするグルーヴィーなベースラインや、鮮やかなストリングス。ライといえば「モダンで仄暗いベッドルームにたゆたう音楽」みたいなイメージでしたが、今作には光が射す瞬間があります。ラテンの香り漂う「Safeword」は、穏やかな陽気のもと踊りたくなる1曲です。
春の匂いがしたら、今年もそろそろ『Ribbons』を聴く季節。ビビオは、初めてなのに懐かしい感覚を音で表現するのに長けた人で、「Curls」は野山を駆け回った幼少期(実際にはそんな経験がなくても)がフラッシュバックして、胸をキュンと締めつけられます。
もう1枚、ビビオのエバーグリーンな音楽に魅了された方へおすすめしたいのが『Heron』。半世紀前の野外録音が生んだ、奇跡みたいなアルバムです。干し草のうえで編んだ花冠、カーテンを揺らす朝の風といった牧歌的な世界観。素朴で洗練されたメロディが、聴く者をこもれび降り注ぐ秘密の場所へと連れ出します。めまぐるしい変化についていかなければならないとき、時代や流行を超えて愛おしむものがあるというのはなんと心強いことか。ヘロンの美しいメロディに触れるたび、そう思います。
RHYE『Home』
中性的なボイスを持つマイク・ミロシュのエレクトリック・プロジェクト。メロウな中にもファンク/ディスコのエッセンスを取り入れ、今までにない躍動的グルーヴが印象的な最新作

BIBIO『Ribbons』
スティーブン・ウィルキンソンのプロジェクト。イギリス~アイルランドのフォークからの影響を受けた情緒豊かなサウンドが魅力的な2019年4月リリースの春アルバム

HERON『Heron』
イギリスのフォークグループによる1970年のデビュー作。アコーディオンや鳥のさえずりが朗らか。野原で車座になって奏でることの美しさを伝えるフィールドレコーディングの名盤
