芸者時代の私にとって、「成功者と呼ばれる方のなかに、お幸せそうな方とそうでない方がいらっしゃるのはなぜか」ということが私にとっての大きな疑問でした。自分なりに予測した理由はいくつかありましたが、「許せない」という気持ちを抱えておいでの場合は、幸せを感じにくくなるのでは、と思っていました。
芸者を引退してからも、「幸せに生きるためにはどうしたらいいか」を考えるのがライフワークですが、「許す」ということに関しては、「許せないものを、無理にガマンして許そうとしてもうまくいかないし、それでは心が壊れてしまう場合もある」と、納得いく答えが出ませんでした。そんなときにある方が、「許せない自分を許す」というお話をしてくださって、なるほどと納得しました。
「許そう」と思うと、「許せない自分はダメだ」と自分を責めたり、「どうしてあんな人を許さなくちゃいけないんだ」と、怒りがさらに湧いたりすることもありますよね。そんなときに、「あ〜、私、許せないんだなぁ。そんな私のことをまずは許そう」と思うと、それまで「許そう」と必死になるあまり浪費していたエネルギーを使わずにすみます。普段は意識していなくても、なにかに対して「許せない」という気持ちを握りしめていると、本来ならば自分を幸せにするために使うエネルギーが奪われてしまいます。
ことわざや多くの宗教で、「赦し」こそが奇跡を起こし、人生を幸せに導くと説いているのは、許すことで、許された人が幸せになるのではなく、許した自分こそが幸せになれるからなのだと気づかせてもらった気がしました。どうしても許せないものがあるときにはまず、「許せない自分を許す」。そして余力があれば、できる範囲で、今まで許せなかったものを許していく。そうして自分の中のエネルギーの有効活用をしたいものです。