illustration: Yu Fukagawa text: 千代里

馬鹿にしないことで得るもの《お多福美人講座》


 芸者になりたての頃に驚いたことのひとつが、お客様の多くがお披露目したての私たちの話をちゃんと聞いてくださったことでした。新橋のお座敷は、お客様のほとんどが政財界の方々で、どちらかといえばフォーマルな場。お客様にとっては仕事の延長という趣がありました。そんななかで、社会経験のほとんどない、芸者としても未熟な者の話に耳を傾けてもらえるとは思っていなかったので、とってもうれしかったし、自然と尊敬の念が湧き、人として大好き~という気持ちにもなりました。

 そういうお客様は、私たち若手の話をちゃんと聞いてくださるだけでなく、どなたとお話されるときも、「知らなかったよ」「君はそんなふうに考えているのか」と受け入れ、“誰からも学ぶ”という姿勢を、生きたお手本のように見せてくださったのです。人は、相手に対して “とるに足らない人・意見”と思ってしまうと、その人からは学ぼうとしませんよね。相手の話が、どんなにいい内容で人生の役に立つことでも、耳に入ってこないのです。人の話を心から聞くことができれば、むしろ自分の内側が豊かになると思うのです。

 また、私が意味の通じないような話をしているときでさえも、お客様が、私を馬鹿にせずに接してくださったからこそ、尊敬し、好意を持ち、精一杯お座敷をつとめようという気持ちにもなりました。私は単純なので、邪険にされていたらきっと嫌いになっていたと思います(笑)。敵になるか味方になるかは、自分の接し方にもよるのですね。私自身はまだまだ程遠く、歳を重ねたことで、若い人(とくに息子!)より世の中を知っていると思うことがあるのですが、そんなときにはお客様たちの姿を思い出すようにしています。人を馬鹿にして適当にあしらっているとき、いちばんの馬鹿は、本当は自分なのかもしれません。

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