あるとき、置屋のお姉さんからある役者さんについて「ちよりんはどう思う?」と聞かれました。「いばっていてエラそうで嫌いです!」と答えると、「あら、そこがかわいいんじゃない~」とお姉さんは笑うのです。また、そのお姉さんは、気むずかしいお客様のことを「可愛いわね、スネちゃって」などと言うこともありました。私は、不機嫌な人や、嫌なことを言う人はすぐに敵視していましたが、お姉さんは、「そんなこと言いたくなっちゃう気分なのね~」という受け止め方だったのです。
子供が手を振り回して泣いていれば、「わかってよ~」という意思表示なのかなと思えますが、社会的地位のある方や有名な方、年配の方でも、うまく気持ちを表現できないことがあるなんて思ってもみませんでした。ましてや、「かわいい」という受け止め方があるなんて! でもたしかに、「怖い」と思っていた人の口から、「さびしかった」 「どうやって気持ちを伝えていいのかわからなかった」という言葉を聞くと印象が変わります。そういう感情表現を許すと、迷惑な大人が増えるという考えもあるかもしれませんが、相手の「わかってほしい気持ち」がわかって、それを「かわいい♡」と思えたときに、私自身も楽になりました。そんな経験をしてからは「これはありだな」と思うようになったのです。
嫌だと思う言動に対して、どうしてそう振る舞うのかを探り、それをかわいいと思えたら、まずこちらの気持ちが変わります。すると副産物として、相手の態度が変わることもありました。嫌いなものが減ると、世界がそれまでより楽しいところに変わります。思い返してみると、私がしんどいと感じていたお座敷でも、お姉さんはとても楽しそうで、お客様からもとても大切にされていました。「このヤロ~!」と思う人と出会ったときは、「かわいい♡」と感じる修行と思うことにしています。
