新天地「Le FAVORI」を選んだ理由 古澤英夫《プロフェッショナルの肖像「PRO-FILE」WEB LIMITED》②

グルメ

難病を乗り越え、一歩先へ

 4月に紀尾井町の人気フランス料理店「Le FAVORI(ル・ファヴォリ)」のシェフに就任した古澤英夫。20代のフランス修行を経て、帰国後は現代フレンチの巨匠アラン・デュカスの右腕として約10年働いた。
 副料理長を務めた「ブノア アラン・デュカス 東京」(表参道)がミシュラン一つ星を獲得するなど十分な実績を積み、満を持して2017年に独立し、銀座にお店を開業した。
 「料理に携わってきた約20年間のすべてを集約させるつもりでした。サービスも含めてすべて見ていたし、あまり寝なくられなくて無茶をしていたのかな」と振り返る。
 開店後約8カ月で急に体重が落ち始め、体調の変化に気付いたが、働き続けていたところ、厨房(ちゅうぼう)で仕込み中に倒れた。すぐに集中治療室に入り、治療したが内臓の難病と診断され、4カ月の入院。お店は閉店を余儀なくされた。
 「食事もできない状態だったので、そのときは料理人の道を完全にあきらめました。本当に絶望し、料理番組もみたくないぐらい」
 だが、奇跡的に体調が回復すると、料理への意欲が再び沸いてきた。デュカスグループへの復帰の打診もあったが、新天地としてル・ファヴォリを選び、再スタートを切っている。

favori-cocktail.jpgカニとホタテのタルタルに、アボカドを「エスプーマ」という調理法でムース状にし、キャビアをのせたアミューズ(上)、デザートの大ぶりなマカロンと、サクラの塩漬けのシャーベット(下)最初から最後の一皿まで、全力を注ぐシェフの姿勢が感じられる。

favori-dessert.jpg 「一歩先に進むため、新たな道に踏み出しました。病気で、いつまで料理を届けられるか分からないという思いが芽生え、より真剣に一皿一皿に向き合うようになりましたし、おいしさに加えて健康に良い料理を意識しています」
 お店で重視しているのが”おもてなし”だ。料理へのこだわりは強いが、あえてサービスが「7割」と言い切る。「自分がおいしいと思う、というだけの独善では成功しない。お客さんの反応を知り、より喜んでもらう。そのために最善を尽くすし、お店の一員として幸せな空間づくりに携わりたい」
(敬称略) 

    Le FAVORI(千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス3階)
 営業時間:ランチ11:30~15:00 ディナー17:30~22:30
 定休日:第1、第3月曜 ※5月6日(月・休)は営業し、翌7日(火)休み
 価格:ランチ4500円~、ディナー8000円~ ※いずれも税・サービス料別
 TEL 03-6272-3764

    https://lefavori.jp/

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 ふるさわ ひでお
 1979年、東京生まれ。都内でフランス料理の基礎を学び、24歳で渡仏。ミシュラン3つ星など輝かしい実績のあるレストラン6店で修行し、帰国後に「ブノア アラン・デュカス 東京」の副料理長を務める。「ベージュ アラン・デュカス 東京」も含め、約10年にわたってデュカスの右腕として働き、今年4月に「Le FAVORI」のシェフに就任。

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