この街の、ちょっといいものつくる人
【UNOSのミニ千社札シール】
《橘流寄席文字・江戸文字書家》 橘 右之吉さん
故きを温ねて新しきを知る。
伝統文字の進化は続く。
江戸文字を使ったさまざまなクリエイティブに携わる、橘 右之吉さん。江戸文字とは、江戸時代に歌舞伎や相撲などに使われていた独特な文字の総称で、右之吉さんはそのひとつ「橘流寄席文字」の大家。日本古来の千社札を名入りのステッカーにした"ミニ千社札シール"の発案者だ。 千社札とは江戸時代に始まった稲荷信仰を発祥とする、名前や住所を書き込んで山門やお堂に貼り付けるためのお札。「故・立川談志師匠がシールにしていて斬新だなと思い、着想しました。師匠が持っていたものは大きかったので、使いやすいミニサイズにしたんです」。
ミニ千社札シールのデビューは、花柳界との縁から。宴席でのあいさつ・もてなしの際、お客様に顔を覚えてもらうための名刺代わりに、芸者と芸妓・舞妓にプレゼントしたという。お客様の財布の内側に貼っていただけるよう、噺家さながらの洒落をきかせて渡すためだ。「舞妓のシールは『お金が舞い込む(舞妓)』、 芸妓のシールには『お金が"もっと"舞い込む(元・舞妓)』という意味を込めました。財布だと使うたびに目にするので、その日のことを思い出していただけますから」。シールに親しみやすい意味を持たせたのは、その存在を広まりやすくするためだった。
「言霊というものがあると思っていて、文字にも魂が宿ると信じています。千社札シールは遊びのきいた名刺のようなものですから、その人『らしさ』がないといけません。それだけに、お客様の要望や個性を文字で具現化するため、一画ごとに言霊をのせるんです。見た人の感情を動かせなければ、活字と一緒ですから」
右之吉さんの活動は多岐にわたる。寄席や有名社寺、新ばし芸者衆による歴史ある踊りの公演「東をどり」などへの揮毫(きごう)・筆耕(ひっこう)をはじめ、アパレルブランドからの依頼で「黒眼帯(ブラックアイパッチ)」 「天国東京(パラダイス トウキョウ)」と当て字で書いた看板やロゴ制作など。先達が築いてきた伝統に自身の感覚や個性を重ね、時代のニーズに応えながら、新たな伝統へと昇華している。
「時代が変われば使い方も変わり、表現方法も変わります。伝統にとらわれすぎて新しいチャレンジができないのはもったいないし、つまらない。伝統には多様性があるべきなんです。そのほうが文化も広がり、後世まで残る。いろんなことができるという可能性を信じたほうが、絶対にいい。自由に発想し、活用することが"粋"なんです」
ミニ千社札シールも、当時のかたちを残し、いまを生きている。「伝統は日々、進化させていかないと。進化しながら生き続けていくのが伝統ですから」。
伝統文字の世界には、今日も、新たな風が吹いている。
※京都では舞妓を経て芸妓となる。東京では芸妓を芸者、舞妓を半玉という

江戸時代に町火消しが延焼を防いだ場所に組名を記して掲げた「消し札」をストラップに。柘植製。

春千夜さんは、いちばん左のものを愛用中。梅の花をちりばめて名前の「春」を表現したそう。
《買えるのは、ここのお店》
湯島駅(東京メトロ千代田線)
株式会社UNOS

橘 右之吉さんが代表を務め、湯島天神唐門前にアトリエ兼工房を構える。ミニ千社札シールや火消し札ストラップ(いずれも注文生産)、お土産やプレゼントとしても楽しい千社札、お名前シールや合切袋など、江戸文字をあしらった商品が並ぶ。
文京区湯島2-33-9 1F
Tel. 03-6240-1711
[営]9:30~17:30
[休]土・日・祝
https://unos.co.jp
お渡しすると、みなさん喜んでくれます。女性からは「かわいい!」と好評で、
宴席で交換会になるほどです(笑)。

《案内人》春千代さん
置屋「千代田」に所属する新ばし芸者。お披露目から6年。「花柳流」五世宗家家元、五代目 花柳壽輔さんの指導のもと、日々、芸に励む。