この街の、ちょっといいものつくる人
【清水硝子の江戸切子アイテム】
《清水硝子 代表取締役》 清水三千代さん
伝統の灯を絶やさぬよう
発展させ、未来を切り拓く。
昨年、創業100年を迎えた清水硝子。東京都から「伝統工芸品」に指定され、経済産業大臣から「伝統的工芸品」として認定されている“江戸切子”をはじめとした、カットグラスの加工を行う工房だ。切子細工を施したロックグラスやタンブラー、器などのオリジナル製品の販売も手がけている。
「江戸切子は、いまでは『色被せガラス*』を用いますが、もとは透明なガラスにカットを入れてつくるのが始まりでした。カットは深く鮮明で、クリアと色被せのシャープなコントラストが特徴です」
切子には薩摩切子もあるが、薩摩切子が藩を挙げて取り組んで制作された進呈品・贈答品なのに対し、江戸切子は町民文化から育まれた日用品だという。「切子の製品を買っても箱にしまったまま、飾ったままという方も多いのですが、せっかくなら使っていただきたい。職人が一つひとつ手作業で削り出していますから、手になじみやすかったり、口あたりがよかったり、工業製品にはない、手づくりならではの温もりを感じていただけると思います」。飲み物をグラスに注ぐと、色被せガラスの輝きと切子のカットが光の乱反射をまとう、幻想的な光景に心が躍る。グラスの底にカットを施しているものなら、覗き込むと万華鏡のような魅惑の世界が広がる。「使ってこそ、よさがわかると思うんです。毎日の生活の中に取り入れるだけで、いつもの水やお酒、食べ物がおいしく感じられる。暮らしの中のふとした瞬間が華やぐと思います」。
清水硝子は東京スカイツリー®の四季をテーマにした4機のエレベーターのうち、夏を表現した“隅田川の空”の装飾の一部を手がけた。切子でつくられた花火が壁面いっぱいに咲き、明滅を繰り返す。「内装に関わるのは初めてでしたが、これが転機になりました。本業の制作依頼につながり、またミュージシャンやサッカーのJ1リーグのチームからお声がけをいただくなど、異業種とのコラボレーションにも恵まれています。これからも新しいことに挑戦していきたいですし、私たちの取り組みにより、切子に興味を持ってくださる人が少しでも増えたらうれしいです」。
江戸切子は伝統工芸の中でもデザインの自由度が高く、使い勝手もよい。「昔は大皿や大きな花瓶といった重いものが多かったので、男性の職人が主力でした。現在は女性の職人も増えて、こまやかな視点によるデザインやアイデアでつくられた商品が人気なんですよ」。長い歴史の中で進化を続ける江戸切子が、どのような道を辿るのか。これからも楽しみだ。

ガラスを成形する際にどうしても発生してしまう気泡をデザインとして取り入れた「AWAKO COLLECTION」のグラス。左からAWA-KIRA 1万4300円、AWA-WA 1万6500円、AWA-KOKO 1万1000円。

透き(クリア)の部分の細かい加工は、江戸切子の伝統的な文様のひとつ“菊繋ぎ”。繊細かつ緻密なカットは、息をのむほどの美しさ。光の屈折が起こりやすく、切子らしい華やかな輝きが楽しめる。

ダイヤモンドホイールという機械にガラスを押し当ててカットしていく。清水硝子には7名の職人が在籍していて、そのうち女性は5名。2名の女性伝統工芸士を輩出した(1名在籍、1名独立)。
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清水硝子

1923年(大正12年)創業。手づくりによる江戸切子の伝統技法を守り続けながら、暮らしのさまざまなシーンに寄り添い、楽しみながら普段づかいできる、シンプルでモダンな切子アイテムを多数制作。引出物や記念品などのオーダーメイドも可能。
※清水硝子の商品は「JAPAN CRAFTS by TOKYO TESHIGOTO」でも展示・販売されます。
葛飾区堀切4-64-7
Tel. 03-3690-1205