illustration: Shogo Sekine

#リペアってクール?《東京#CODE》


 最近行ったイベントでとても楽しく勉強になったものがあります。それは大阪の阪急うめだ本店にオープンした新しいフロアのお披露目会でした。名前は「グリーンエイジ」。“自然共生型ライフスタイル”を提案するフロアです。東京発信の本誌で大阪の話?と思われるかもだけど、ここがとにかく素晴らしかったので、お話しさせてください。

 フロアに入ると、工芸作家のオブジェ。フロアの各所や什器も環境負荷が少ない素材を使用していて、優しいグリーンや木の香りに包まれています。ここの目玉はグッチやプラダ、ミュウミュウなどのラグジュアリーブランドが、それぞれに環境に配慮したアイテムをそろえていることです。また特に目立っていたのは、ロエベのリペアに特化した「ロエベ リクラフト」。ここは同ブランドの革製品の修理やメンテナンス、クリーニングなどを専門に行っています。長く愛用しているロエベのバッグがあるのですが、ちょっと色が褪せてしまったので、これはうれしいサービスです。

 ほかにもフロアには「リ コンシェルジュ」というカウンターがあります。服のリペアやカスタマイズ、黒染め、アウトドア用品の買い取りやレンタルなどなどができます。「サステナブル」と言うのは簡単ですが、ここにはそれを実現するための各種サービスがそろっていることがいいな、と思うのです。

 最近のブランドバッグの高騰には驚くばかりです。私たちがラグジュアリーブランドを選ぶ理由として、「かわいいから」はもちろん大切だけど、「高品質なものを選びたい」、「長く愛せるものを買いたい」という思いがより強くなっているようです。流行に振り回されて毎年買い換えるよりも、賢く、長く、良いものを使っていきたいという消費者のニーズが、以前より高まっていると思えます。

 Z世代の子たちを見ていると、ブランドバッグの所有率が高くてびっくりします。その理由を聞くと、「メルカリで売るときは結局ブランドしか勝たん」から、なのだそうです。中古ブランド品の販売をしている知人によると、たとえばルイ・ヴィトンやシャネル、エルメスなどが中古市場で高値で取引されるのは、アウトレットを持っていないからだとか。なるほど。ブランドを買うときの基準として、二次流通でも値崩れしないことが重要なのだそうです。

 また、ブランド側にとっては自分たちのブランドを長く愛してくれる顧客とのつながりが重要です。リペアにも対応して、製品に責任を持ち続けてくれるブランドは、よりよい顧客と絆で結ばれていく。以前、恩人から譲ってもらった動かないカルティエのタンクを、銀座店で修理に出したことがありました。パリの本店まで送って修理してくれて、6ヵ月かけてその時計が戻ってきました。そのとき、丁寧に接客していただいたことは今もずっと大切な記憶です。そういう意味でも、「リペア」や「メンテナンス」部門がちゃんとあることって、ブランド選びにおける大切な要素です。

 つくり手も売り手も、そして買い手である私たちも、「ずっと長く愛すること」がキーワードになっていくのだと。よりよい製品をつくり、消費者に届けて、売った後まで責任を持っていくこと。そうして生まれた信頼は、世代を超えていきます。その連鎖こそが持続可能性なのですね。

THIS MONTH'S CODE

#グリーンエイジ

オープンは今年の4月。ほかにも環境に配慮した素材を使ったブランドやオーガニックビューティブランドなどが集結。売り上げも好調に推移している。

#グッチやプラダ、ミュウミュウなど

さまざまなブランドがリサイクル素材やオーガニックコットン製のアイテムなど、このフロアのために特別なラインナップを展開していることも画期的。

#黒染め

「京都紋付」による、洋服を黒く染め直すサービス。黒紋付で培った技術で洋服を染め直して使い続けることができる。






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