text: Sayoko Kusaka photo: Shigeo Kosaka edit: Kohei Nishihara(EATer)

わたしと、わたしの大切な人のいのちを守るために[フェムトーク]


女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。


まずは想像し、考えてみる

 関東大震災から100年の節目だった2023年9月。メトロポリターナでは、防災を考える契機として「想像しよう、もしものこと」と題した特集を展開した。こだわったポイントは”多様性”の視点だ。100年前と比べ、東京では高齢者や外国人観光客の数も増えた。遠くから通学する学生や、小さな子供を預けて仕事に向かう人など、都内を行き交う人のライフスタイルも多様化している。その道筋に存在するメトロポリターナができることは何か、と考えたときに、誰もが自分のこととして捉え、なおかつ、たまたまそのときその場で一緒になった人と、どのようにコミュニケーションを取り命をつなぐのか。多様な人の立場になって想像し、いざというときの心構えになるような構成を心がけ、企画を検討した。この、“多様な人の立場になって想像する”という視点は、これまでフェムトークやフェムケアプロジェクトを通じて、ひとりひとりの声に耳を傾けることの重要性を何度も何度も感じてきた私たちだからこそ、「防災」という切り口にも必ず入れたい視点だった。そして今回の特集で、災害時にこそ、少数派の声に耳を傾けることの大切さを実感した。

なぜ「防災」に多様な視点が必要なのか

 東京都は、9月1日に、防災対策について役立つ情報をまとめた防災ブック『東京くらし防災』と『東京防災』の最新版を公開した。都内に住んでいる方なら、黄色い表紙の『東京防災』を知っている方も多いだろう。8年前に、都民の全世帯に対して配られたあの冊子だ。実はその2年半後に、女性に特化した『東京くらし防災』が発行されたのだが、このことを知っている人は意外と少ないかもしれない。そしてこのたびこの2冊をリニューアルし、“多様性”の視点を強化し再編したのが、今回の2冊となっている。

 東京都総務局総合防災部 防災管理調整担当課長の江畑直人さんは、リニューアルについてこう話す。「今回のポイントのひとつは、女性の視点に加えて、多様な人の視点に触れていることです。お年寄りや、障害のある方、体力に不安のある方など、女性のみならず、さまざまな人の困りごとに応じて防災を考えることができるように設計し、誰でも『自分はこれだ』と自分事化しやすいように工夫しています」。社会における人の変化に加え、たとえばマンション防災など、居住環境の変化も反映されている。編集検討委員会には、防災の専門家に加え、雑誌の編集者など、さまざまな人が参加した。

 さらにもう一つのポイントは、「行動編(東京くらし防災)」と「知識編(東京防災)」の2冊に分けた点だという。「まずはステップ1として行動編を読んでいただき、日常生活の中から気軽にできることをはじめてもらう。さらに知識を深めたい方はステップ2の知識編へ読み進めていただけるような構成になっています」

 確かに私たちは9月号の特集を通じて、「机の下に隠れる」「AEDを探す」といった単純な防災知識だけでは、想定外の事態に対応しきれないことを実感した。そして、その想定外のときにこそ必要なのが、「想像する力」であることも深く理解した。リニューアルした『東京くらし防災』と『東京防災』は、はじめに自分の状態や住環境、興味や関心に応じて、必要なページにたどり着けるような仕組みになっており、常に想像を促す工夫がされている。ステップ1が行動編であるところもいい。「最初に行動編を読み、自分の身の回りの環境に当てはめてみることで、とるべき行動をより具体化することができます。そしてそのときはじめて本当に必要な知識が何か、意識するきっかけになると思います」

 都内各世帯には2024年の3月までに冊子になって自宅に届くという。現在は、WEBやスマートフォンで見ることができるので、右の二次元コードからアクセスし、「自分だったら、あの人だったら」と多様な視点を見つけてみてほしい。自分や、身の回りの人の困りごとを想像することは、きっと災害時のみならず、日常の中にも通ずる大切な気づきにつながるはずだ。

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江畑さんがおすすめの読み方を教えてくれた。「まずは『東京くらし防災』冒頭のp8-9を開いてみてください。そこには『身を守る、つかまる、危険から離れる』といった、発災時に全員に共通してやってほしいことが書かれています。その次の4ページには、災害発生後の時間ごとに、具体的に何に困るのかの代表的なものが書かれています。自分だったらどれが当てはまるか考えて、もしものときに備えていただけると嬉しいです」

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1028036/1028051/index.html


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メトロポリターナ編集長
日下紗代子

もしものときに何ができるだろう

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Fem Care Project

「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。


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