兜町に昨年誕生した「KABUTO ONE」。その中をのぞいてみれば、この街の未来の姿が垣間見える。このビルに込めた思いについて、開発を手がけた平和不動産に話を聞いた。
路面に賑わいを創出する
兜町の新たなランドマーク
「KABUTO ONE」は昨年8月に誕生した地上15階、地下2階の複合施設。1947年に創業し、兜町に多くの不動産を所有する平和不動産と、山種不動産、ちばぎん証券が共同で建設したものだ。
兜町は証券・金融の日本の中心地として発展してきたが、株取引の電子化によって1999年に東京証券取引所(以下、東証)の株券売買立会場が閉鎖。証券マンの姿も街から少しずつ消えていき、街全体が衰退していったという。そこで立ち上がったのが東証ビルを保有している平和不動産だ。兜町に縁の深い実業家・渋沢栄一の「コトはじめ」の精神にあやかって「起点であり、輝点となる。」という理念を掲げ、街の再活性化に向けて「兜町・茅場町再開発プロジェクト」を発足させ、その第1弾として「KABUTO ONE」の建設を計画した。
「ビルを建てただけでは賑わいは取り戻せません。魅力的な店舗を誘致して、街の外から人を呼び込みたいと考えました。国内外の若い投資家が集まる街にして、兜町を国際金融都市として再び元気にしたいと思っています」と平和不動産・開発推進部の伊勢谷俊光さん。「わざわざ足を運びたくなるような店舗を誘致したいと思ったので、店主の個性が光るお店に、声をかけていきました。一緒に街全体を盛り上げていこうという想いに共感してくれた店主たちは、既存の店舗の焼き直しではなく、新しいことにチャレンジしてくださいました」
再開発プロジェクトでは、縁起を担ぐ文化など、古くから続く金融の街ならではの“文脈”も大事にしている。街を散策しながら、そうした文化が感じられるアイテムを探してみるのもおもしろい。
KABUTO ONE
中央区日本橋兜町7-1
https://kabutoone.tokyo
KABUTO ONEに行くならこちらへ!
生産者・料理人・食べる人をつなぐ
多彩な食文化を体験できる食堂
こだわりをもっておいしい食材を生産する全国各地の生産者を応援するために、和食、中華、フレンチ、アメリカン、イタリアン、スイーツといった多彩なジャンルの人気料理人6名がメニューを監修。兜町の新しい食のインフラを目指した大空間には、メインダイニングのほかにラウンジ、カウンターもあり、あらゆるシーンで活用できる。
週替わりのランチ、シェフズメニュー(ごはん・スープ・サラダ・お漬物付き) 1300円。写真は、岩手県産のみちのく清流鶏を使用したレモンハーブチキンステーキ マスタードクリームソースの定食
KABEAT
[営]月〜金 11:00〜22:30、土 11:00〜21:00、日 11:00〜17:00
[休]無休
instagram:@kabeat_official
ストリートフードを取り入れた
新感覚のモダンスリランカ料理
オーナーシェフは世界中を旅し、新しいスパイス料理を発信している「スパイス・カフェ」の伊藤一城さん。スリランカ料理はアーユルヴェーダにもとづくもので、食前に飲むカルダモンの香り付きの白湯には食欲増進作用も。日本人の口に合うようにアレンジされたカレーは、野菜の旨みと20種類以上のスパイスによる滋味深い味わいで、くせになりそう!
鰯の丸干しや大根のココナッツカレー、じゃがいものスパイス炒めなど、9種類のおかずが添えられた日替わりカレーランチプレート 1650円
HOPPERS
[営]ランチ 11:30〜15:00(L.O. 14:00)、ディナー 18:00〜22:00(L.O. 20:30)
[休]水
instagram:@hopperstokyo
食と会話で街を豊かに!
笑顔が集うコミュニティカフェ
広々とした開放的な空間で、自家焙煎のコーヒーをはじめ自家製のパンや焼き菓子、ランチなど、こだわりの素材を使ったメニューを楽しめる。「地元の方も含め、誰もが気軽に集える場所でありたい。街に賑わいをつくる仕掛けづくりもしていく予定」と広報担当のコミュニティビルダー吉武美紀さん。テラス席もあり、街の風景を眺めながら会話も弾みそう!
ランチは週替わり定食やサラダプレートなど6種類から選べる。写真は旬の新鮮野菜が味わえる季節のデリプレート(ランチ) 1200円
KNAG
[営]月〜金 8:00〜22:00、土・日・祝 10:00〜21:00
[休]無休
instagram:@knag_kabutocho
お金と暮らしの本を集めた
仕事もはかどる癒やし空間
兜町ならではのお金にまつわる書籍をはじめ、暮らしに関する書籍などを幅広く集めたブックラウンジ。なかでも渋沢栄一関連の蔵書は随一。新聞書評本を集めた特集コーナーや手書きポップなど、思わず本を手に取りたくなる仕掛けが豊富で、知的好奇心が刺激される。緑あふれる静かな空間で読書やパソコン作業などにも集中でき、食事も楽しめる。
入場料1時間550円〜(平日)、880円〜(土・日・祝)。終日フリードリンク制(コーヒー、紅茶、ウーロン茶)※11:00〜13:00に入場し、880円以上の飲食を利用すれば1時間無料。本を購入すると1時間無料。お得な月額フリーパスもある。
BOOK LOUNGE KABLE
[営]月〜金 11:00〜20:00、土・日・祝 11:00〜19:00
[休]無休
instagram:@kable_booklounge
土に触れ、考え、楽しく学ぶ。
子供たちのための屋上菜園がオープン!
東京証券会館の屋上に誕生した「エディブル カヤバエン」では、さまざまなイベントを通して、自然と触れあう体験ができる。園内にあるガーデンに野菜を植えたり、キッチンで大豆から味噌をつくったり、コンポスターで肥料をつくったりと、豊富なプログラムから生活に身近な“食”の循環を学べる。不定期で開催されるイベントのほか、9月からは(一社)エディブル・スクールヤード・ジャパンと連携した自然学校「アーススコーレ」を開校予定。都心にいながら、土に触れて自然を体験できるのは貴重な機会。ぜひ子供たちと一緒に、気軽に遊びに行ってみて!
5月28日に行われたキッズイベントの様子。自分の手で植物を植えたり、ガーデン内のキッチンで野菜ちらし寿司をつくって食べたりと充実のプログラム内容で、子供たちが賑わっていた。 撮影/鳥谷部有子 写真提供/平和不動産
EDIBLE KAYABAEN
中央区日本橋茅場町1-5-8 屋上
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