illustration: Yu Fukagawa

「感謝のそうじ」で福を呼ぶ〈後編〉《お多福美人講座》


元新橋芸者の千代里による連載「お多福美人講座」。そのWEB特別企画として、千代里流のそうじ術「感謝のそうじ」をご紹介。前編に続いて、この後編では「感謝のそうじ」をすることでどのような変化が生まれるかを、さらにひもといていきます。

 

無視されたものがない部屋に

私は常々、気持ちのよい空間に共通するのは「意識が向けられていない場所がないこと」 だと思っています。ホコリをかぶっていたり、壊れたままになっているものがあるということは、そこに「存在を無視されているものがある」ということだと思います。

 

とはいえ、実際にすべての無視されてきたものに意識を向けたり感謝するのは難しいはずです。もし、自分にとっての適量を超えていると感じたら、それは感謝をしながらも手放してみる、いいきっかけに。 少しずつでも、無視されたものや壊れたものがないように手を入れていくと、部屋が自分に元気をくれる場所になっていきます。

 

全部に感謝できなくていい

「感謝のそうじ」をするなかで、どうしても感謝できないものやしたくないもの、目に入ると嫌な気分になるものも出てくるはず。いただきものである、高かった、などなどの理由があって捨てられなかった、ということもあると思うのですが、 支障のないものであれば、自分の率直な気持ちを優先して処分するのがいいと思います。目に入るものは、自分で思うより自分の気持ちに影響を与えています。無理なく感謝できるものだけを身のまわりに置くことで、暮らしはうんと快適になります。

 

また、「な〜にが感謝だ」みたいな気持ちになることもありますよね(私はあります。笑)。イライラしてどうしようもない、腹が立って、悲しくてetc.…そんなどころじゃないときこそ、「感謝」はできないにしても、とりあえず手を動かす、ものを整えるということが心を立て直してくれます。心が整うから仕草や所作が整うということもありますが、まずは行動に移してみることも、ときには大切です。

ずっと以前に読んだ海外のセラピストの方の本で、死にたいと電話してきたクライアントには引き出し一つ分を整理してから電話し直すように伝えている、という話がありました。たとえ最初は死にたいほどの精神状態でも、いったんそれを脇におき、丁寧にものに触れ、大切に収めていくという作業が、深刻な心の問題を改善する作用があるのだと印象的でした。

 

「感謝のそうじ」では自分にも感謝

そうじをしながら自分を責めたり、できていない場所を見て嫌な気持ちになったりしない「感謝のそうじ」は、自分への感謝も忘れずに。「こうやってそうじができる身体、体力にありがとう〜」という気持ちで取り組んでみてください。

 

また、「感謝のそうじ」は「感謝の家事」としても応用できます。いま目の前にあるもの、触っているものに「ありがとう」と思っているとき、自分の心がいろんな豊かさを受け取っていることに気づきます。

 

日々の暮らしの中で、そうじや家事はどうしても義務になりがちで、私も忙しいときはすぐ、「自分の時間を奪う憎い労働」というとらえ方をしてしまいますが、少し目先を変えることで、「焦りながらいやいや」していたことが、「豊かで幸せを感じること」に変わることを感じられるようになります。

 

「感謝のそうじ」も「感謝の家事」も、 私にとっては日常でできる瞑想やセラピーのようなもの。心に余裕がほしいときほど実践していきたいものです。






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