エンターテインメントでしか味わえない世界を
司馬遼太郎による不朽の名作小説を映画化した『燃えよ剣』が、この秋全国公開を迎える。舞台は、江戸時代末期。幕末の動乱のなか、歴史に名を刻んだ新選組は、どのように結成され、伝説となったのか。土方歳三(岡田准一)の知られざる生涯とともに、激動の時代を描く。本作が映画初出演となる俳優・尾上右近は、松平容保を演じる。
「容保は、京都の治安維持のために幕府から守護職を任される会津藩主で、新選組の結成にも関わる重要な人物。この大役に抜擢いただき、光栄な思いです。かねて映画に出たいという思いと、時代劇にも興味があったので、その願いが同時に叶った作品になりました」
子供の頃から歌舞伎の舞台に立ってきた。右近にとって初となる映画の製作現場は、どんな印象だったのだろう。
「歌舞伎の舞台では、顔見知りの役者のなかで毎日同じ演目を演じています。一方で、当然ながら映画の撮影現場は、初めて会う役者同士が1シーンをつくりあげていくこともあります。現場の張り詰めた空気とともに、幕末という時代背景も相まって、とても緊張しました。集中力を高めながらいろんなことに挑戦できた現場でした」
大きな動きや表情が特徴的な歌舞伎。監督からは、そんな歌舞伎とは対照的に、表現を制限して演じてほしいというリクエストがあったという。「監督の言葉で演技の幅が広がり、歌舞伎の魅力も再発見できた」と右近は語る。はじめての挑戦だった涙するシーンにも、ぜひ注目してほしい。
本作の撮影は、2018年。コロナ禍で先送りになったが、この秋、満を持して公開を迎える。
「この国を思い、争い合いながらも、まっすぐ生きた人々の美しさに光を感じてもらえる作品になっています。エンターテインメントでこそ味わえる世界がきっとあるはず。日常を忘れて、ぜひ劇場でご覧ください」
おのえ うこん
1992年5月28日生まれ。東京都出身。祖父は鶴田浩二。曽祖父は六代目尾上菊五郎。2000年、歌舞伎座で初舞台。歌舞伎伴奏音楽の清元唄方も務める歌舞伎界の二刀流。歌舞伎のみならず大河ドラマ『青天を衝け』をはじめ、ミュージカル、バラエティー、ラジオパーソナリティ、情報番組のキャスターなど多方面に活躍。

『燃えよ剣』
10月15日(金)全国公開
原作:司馬遼太郎
監督・脚本:原田眞人
出演:岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、尾上右近、伊藤英明ほか