photo: Kaori Nishida edit: Shiori Sekine(EATer) styling: Eri Takayama hair & make-up: Aya Murakami

河合優実《プロフェッショナルの肖像「PRO-FILE」》 


カナの現在地を、ありのままに写したかった

 9月6日(金)に公開される映画『ナミビアの砂漠』。山中瑶子監督2作目の長編作品でありながら、第77回カンヌ国際映画祭・国際映画批評家連盟賞を受賞した期待の一作だ。主人公・カナを演じたのは河合優実。仕事も恋愛もなんとなくやり過ごし、まわりの人とぶつかりながら生きるカナは、親近感がありながらも、一度見たら忘れられない愛おしさと魅力を秘めている。演じるうえで、河合はどのように役への理解を深めていったのだろう。

 「“本当にいそう”なリアリティは保ちつつ、映画の主人公としてどうすればカナを面白く表現できるのか考えていました。彼女は気分の浮き沈みが激しく、まわりの人を傷つけたり、正しくない行動を取ってしまったりする。でもこの作品では、カナの行動や人間性に対するジャッジをするのではなく、彼女を見てポジティブな気持ちになってもらいたいなと。カナというキャラクターの理想像を思い描きながら、役を解釈していきました」

 約2時間を通して描かれる等身大のカナの姿が、本作ならではの魅力に繋がっていると河合は話す。

 「作品を通してカナに大きな成長はありません。でも、そこがこの作品の面白さでもある。何かを乗り越えなくても、カナなりに一歩を踏み出す瞬間はあるんです。長い人生の中のほんの一瞬かもしれないけれど、カナにとっては大切な、彼女の現在地をいちばんに写すべきだと思っていました」

 作中、カナはふとしたときにスマホでナミビアにある砂漠のライブ映像を見ている。果てしなく広く何もない砂漠は、雑多で情報にあふれた東京とは対照的な場所のようだ。「カナは近い人との関係で悩みもがいています。遠く離れた砂漠の映像を見ながら、ある種の憧れを抱いたり、いまの状態から脱却しなければならないと感じたりしていたのではないでしょうか」と河合は振り返る。

 東京の街をたゆたうように生きるカナを写した本作。彼女の日常を、ぜひ劇場で見届けてほしい。

 

かわい ゆうみ

2000年、東京都出身。2021年公開『由宇子の天秤』、『サマーフィルムにのって』で第43回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。その後も2022年公開『ちょっと思い出しただけ』、『愛なのに』、今年公開『四月になれば彼女は』などの話題作に出演。現在公開中の映画『あんのこと』では主演、劇場アニメ『ルックバック』では声優を務めるなど、活躍の幅を広げている。


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© 2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

『ナミビアの砂漠』

9月6日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督・脚本:山中瑶子
出演:河合優実、金子大地、寛一郎、新谷ゆづみ、中島歩、唐田えりか、渋谷采郁 ほか
配給:ハピネットファントム・スタジオ


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