photo: Naoki Muramatsu edit: Hideki Taira(EATer)

染絵てぬぐい ふじ屋のてぬぐい[東京きらり人]

コラム, おでかけ

この街の、ちょっといいものつくる人


【染絵てぬぐい ふじ屋のてぬぐい】

《絵師》 川上正洋さん

日本人の生活必需品、
歩みを止めず進化中。

 浅草で三代にわたり、実直なものづくりを貫く「染絵てぬぐい ふじ屋」。浅草の季節の行事、節句、花、歌舞伎などをモチーフにした絵柄のてぬぐいをつくり続けている。「店にあるてぬぐいのほとんどがオリジナルの絵柄ですが、江戸時代後期の天明4年(1784年)に浮世絵師・戯作者の山東京伝が開催したとされる、てぬぐいの展覧会“多南くひ阿は勢“(てぬぐい合わせ)に出品された絵柄の復刻なども手がけています」。

 ふじ屋のてぬぐいは分業でつくられ、絵柄を描く絵師、絵柄を切り抜いて型紙をつくる職人、型紙を生地に当てて色を染めていく職人からなる。「うちは絵師として、絵柄の考案・制作を生業としています。そして、すべてのてぬぐいを『ふじ屋』ブランドとして販売しているので、見た目の美しさや楽しさはもちろん、生地の触感や色の具合など絵柄以外のことにも注力し、製品としての品質の確保にも努めています」。生地は「肌に触れるものだからこそ、使い心地を追求した」という、特注の木綿。さらりとしていて、とてもやわらかい。色にはとくにこだわり、創業から“注染”という技法を採用している。「糸自体を染めるので生地の裏まで色が浸透し、絵柄に表・裏がなく仕上がります」。右下のてぬぐいのような、ダイナミックな構図の絵柄も特徴だそう。「これは父の教えで、絵で説明しすぎず、絵柄を見た人がいろいろ想像できる、余白をもたらす表現を心がけています」。

 絵師として筆をとり、店頭にも立つ三代目の川上正洋さんに、てぬぐいの使い方を尋ねてみた。「よく聞かれるのですが、いつも困ってしまいます(笑)」。てぬぐいは、言わば木綿の切れ布。使い方にルールはないという。「ハンカチのように手をふく、汗をぬぐう。小切れとして何かを包む。吸水・速乾性に優れているので、夏は首に巻いて汗止めにしても。四季を感じられる絵柄も多いので、コレクションしている方もいらっしゃいます。祖父が発案した額装もおすすめしていて、昔の“てぬぐい合わせ”を現代に進化・発展させ“飾って鑑賞する”という楽しみ方を提案しています。古来てぬぐいは、その当時の生活や個人の用途に寄り添い、親しまれてきた道具でした。深く考えず、気軽に、思いのままに使っていただきたいですね」。

 てぬぐいの歴史は古い。「廃れずいまに至るのは“あると便利”だから。それは現代でも変わりません。後世まで続くものづくりをし、時代に即したアプローチで、てぬぐいの価値を高めていきたいです」。 道の先に夢がある限り、川上さんは歩み続ける。

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 “てぬぐい合わせ”で山東京伝が手がけた『熊野染(め鯨)』の復刻柄。鯨を接写して目だけを描き、「めくじらを立てちゃいけません」と洒落たそう。「絵柄には意味が込められているんです」。

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てぬぐいのサイズは、幅35×長さ90~110cm。使うほど手になじみ、色が抜けていくので、ジーンズのような経年変化も楽しめる。「お客様の中には30年使っている方もいらっしゃいます」。

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店内の様子。額装されたてぬぐいは、画廊に並ぶ絵画のよう。「いつか、当時のような“てぬぐい合わせ”をやってみたいですね」。専用の額の販売もしていて、水で簡単に貼り付けられる。


《買えるのは、ここのお店》

浅草駅(東京メトロ銀座線)
染絵てぬぐい ふじ屋

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1946年創業。てぬぐいでつくった手さげバッグや、ハンチング帽なども販売している。オーダーメイドも受け付けていて、名前や家紋、ロゴなどを入れたり、絵柄のイメージを伝えると図案を描いてくれるので、完全オリジナルの一枚をつくることができる。

台東区浅草2-2-15
Tel. 03-3841-2283 
[営]11:00~17:00
[休]木

https://tenugui-fujiya.jp


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